お金の出入りを見える化「資金繰り表」 2024/11/08
今回は資金繰り表の活用について解説します。
【資金繰り表とは】
皆さん、資金繰り表はお作りでしょうか?
「先月は思ったより支払がかさんで、資金が足りなくなるのではとひやひやだった」というご経験のある経営者さまは少なくないと思います。売上は上がっており、利益も上がっているはずなのに、売上の回収と支払時期の関係で、一時的に「手持ちの資金が足りない!」ということは十分に起こりえます。
これがひどい場合には黒字が出ているにも関わらず、支払不履行になり倒産となる「黒字倒産」に至ることもあります。
事業を継続していくためには、手持ちの資金の状況をあらかじめ予測し、対応を図ることが重要になります。その手持ち資金の状況を予測するツールが「資金繰り表」です。
【資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い】
資金繰り表と似たものにキャッシュフロー計算書があります。それぞれ資金の流れを表すものですが、その目的に違いがあります。
キャッシュフロー計算書はある期間(基本的には決算期)の資金の入り(キャッシュ・イン)と支払い(キャッシュ・アウト)の差を計算し、利用可能な資金(フリー・キャッシュフロー)を算出します。過去の現金の動向を把握して、経営の健全性等を測る指標となります。
一方で資金繰り表は、将来の資金の増減を予測するために作るものです。キャッシュフロー計算書は決算期に合わせて作るのですが、資金繰り表は日次や月次など、資金の動向を細かく把握することで、資金ショートをしないような対策を立てるために作ります。
※キャッシュフロー計算書に関しては、別コラムで詳しく解説します。
【資金繰り表の形式】
資金繰り表には決まった形式はありません。
それぞれの企業で売上や仕入れの仕方、及びその回収や支払の手段等が異なるため、自社で使いやすい形式の資金繰り表を使うことが可能です。
またネットを検索すると有料・無料のテンプレートなども出てきますし、作成用ソフトも販売されています。専用ソフトを使わなくても、エクセルを使ってご自身で作成することも可能です。
資金繰り表の構成は、大まかに言って以下の6つのパートに分けられます。
① 前月繰越額
② 売上高
③ 経常収支
④ 経常外収支
⑤ 財務収支
⑥ 翌月繰越額
前月繰越額(①)は前月からの繰越額で、前月の翌月繰越額(⑥)と同額になります。
売上高(②)は当月の売上高です。
経常収支(③)は日々の営業活動で発生する収支で、収入と支出に分かれています。収入は当月の「現金売上」と当月回収した「売掛金」や「手形」など、当月に現金として回収したものになります。(売上高の全てが現金取引のみでない限り、売上高と収入は一致しません)支出には、現金仕入の当月支払分、当月支払の「売掛金」「支払手形」と、当月支払いが発生する「外注費」、「人件費」、「諸経費」などが含まれます。カードで支払ったものなどは、当月の支払ではないので注意です。
経常外収支(④)は本業以外の収支です。収入には補助金の収入や保険の解約収入などが含まれます。一方、支出には設備投資に関する支出や貸付、有価証券の購入、税金などが含まれます。
財務収支(⑤)は、その月新たな借入があれば収入に、返済があれば支出に記載します。
最後に①~⑤までを合計したものが、翌月に繰り越される翌月繰越額になります。
【資金繰り表作成の際の注意点】
上記でお分かりの通り、翌月繰越額(⑥)がマイナスとなると、実際の支払いや借入金の返済が行えなくなります。
そのような事態を避けるために、資金繰り表を作成して資金繰りの予測を行います。
売上には現金のもの、翌月に回収できるもの、回収が数カ月後になる手形など、様々なものがあります。売上を計上する際、「現金売上」と「翌月回収売上」「2か月後回収売上」などあらかじめ分類しておくと、収入の記載の際に明確に予想が立てられます。
同様に、支払に関しても支払先により支払サイトは決まっていると思いますので、取引先ごとに支払サイトを確認して記入する必要があります。
予算を立てる際には、売上や収入は低めに見て、支出は高くなることを想定して設定するようにします。売上や収入を高めに見積って、支出を低く抑える予算を立てると、実際には資金がショートしてしまうことも起こります。
また、資金繰り表は作成したら終わりではなく、日々更新していくべきものです。月次の資金繰り表であれば、少なくとも毎月、予算と実績を比較し、翌月以降の予算の修正を行う必要があります。日次の資金繰り表(日繰り表とも言います)はそれこそ毎日記入して資金の流れを把握するツールです。
※日繰り表には、簡易に毎日の入金と出金を記入していくものから、勘定科目ごとに細かく記入するものなど様々な形があります。ネットにもいくつか入手できるテンプレートもあるので、一度ご確認ください。
月次の資金繰り表では、月内での資金ショートを見つけることができない場合があります。このため、月次の資金繰り表を作成するとともに、日繰り表を作成して日々の資金の流れを把握することをお勧めします。
【まとめ】
いかがだったでしょうか。
資金繰り表を作成するのは手間ではありますが、資金の流れを予想することは、単に資金ショートへの備えだけではなく、今後ご自身の企業がどのように発展していくかを、明確な数字で確認できる機会にもなります。
経営の安定と今後の経営へのモチベーションのために、ぜひ、資金繰り表を有効活用してください、
それでは、次回もよろしくお願いいたします。