営業運転資本回転期間とは 2024/11/07
今回はロカベンの財務分析の指標のひとつである「営業運転資本回転期間」について解説します。
そもそも「営業運転資本って何?」と思われるかもしれません。
【営業運転資本とは】
営業運転資本とは、仕入れから販売、売上代金の回収まで、企業が日々の事業を営んでいくうえで必要となる資金のことです。「営業」と付いているのは、財務面での投資活動や長期の資金運用以外の、日常的な営業活動に直接かかわる部分を指します。
キャッシュフローに「営業」、「財務」、「投資」の3つの区分があるのと同じ意味ですね。
日々の事業活動では、まず商品やサービスを提供するための材料を仕入れ、人員を確保します。そのうえで、外注を含めて商品加工などを行い、それを販売して現金を回収するというサイクルを回しています。
お金の流れで見ると、まず仕入れや外注などの支払が発生し、商品やサービスを販売して、現金が回収されるまでは、支出の方が多くなります。
仕入れの支払いから現金回収するまでに必要な手元資金が「営業運転資本」です。
材料を仕入れて商品を生産しても、それが在庫として残っている限り、現金化はできません。また、商品を販売しても、掛売や手形などで集金した場合には、手元に現金が来るまでに時間がかかります。逆に、仕入れを掛で買っていれば、手元から出ていく資金は少なく(出ていくのが遅く)なります。
日常的に手元になければいけない資金(資本)を把握することが重要になることは、お分かりいただけると思います。
【営業運転資本の計算式】
それでは具体的に「営業運転資本」はどのように計算するのでしょうか。
先程もご説明した通り、生産してもまだ販売できていない商品(棚卸在庫)は現金化されていません。また、販売しても回収までに時間がかかる掛売や手形(売上債権)も現金化できていないため、それらに相当する資金がないと事業が継続できません。一方で、仕入れてはいるものの、実際にはまだ払っていない金額(買入債務)は、手元に現金が残っていますのでプラス要因となります。
そのため、営業運転資本を求める計算式は下記のようになります。
営業運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務
もう少し簡略化すると、
営業運転資本=売掛金+商品(在庫)-買掛金
となります。
例えば、売掛金が5,000千円で、商品在庫が3,000千円、買掛金が2,000千円の場合、営業運転資本は以下のように計算されます。
5,000千円+3,000千円-2,000千円=6,000千円
つまり、売掛金、商品在庫が多く、買掛金が少ないと、必要となる営業運転資本は多くなり、
売掛金、商品在庫が少なく、買掛金が多いと必要となる営業運転資本は少なくなります。
【営業運転資金回転期間】
それではいよいよ本題の営業運転資本回転期間についてです。企業が日々の事業を営んでいくうえで必要となる資金が営業運転資本ですので、これが月商の何カ月分になるかを示すのが、営業運転資本回転期間です。
同じ営業運転資本を必要として企業でも、事業規模が異なればその企業にとっての営業運転資本の重みは異なります。
前出の6,000千円の営業運転資本を必要としている企業の年間売上が72,000千円であれば、営業運転資本は年間売上の1/12、つまり1か月分となります。一方、6,000千円の営業運転資本を必要としている企業の年間売上が12,000千円の場合には、営業運転資本は年間売上の1/2、つまり6カ月分となります。当然、6カ月分の営業運転資本を必要とする企業の方が、資金繰りは厳しい状態であるといえます。
営業運転資本回転期間の計算式は下記の通りです。
営業運転資本回転期間(単位「ヵ月」)
=営業運転資本÷月商
=(売上債権+棚卸資産-仕入債務)÷(売上高÷12)
営業運転資本回転期間は、業種や規模等によっても大きく異なります。一般的に、小売業やサービス業などB to C向けの企業は短く、製造業等は長くなる傾向があります。ローカルベンチマークでは、規模や業種から基準となる回転期間を算出しますので、自社と基準とを比較してみることをお勧めします。
営業運転資本回転期間は、短い方が資金繰りに余裕がある状態ですので、売掛金や商品在庫の圧縮を進めつつ、買掛金を維持するような工夫が望まれます。
【まとめ】
いかがだったでしょうか。
営業運転資本回転期間の意味や利用方法をお分かりいただけましたでしょうか。
経営指標のような数値を把握することは、人が血圧を測ったり、尿酸値を確認したりするのと同じように、企業の健康管理に欠かせないものです。一度、ご自身の会社の営業運転資本回転期間を求めてはいかがでしょうか。
それではた次回、お会いしましょう。