2024/12/26 令和6年度補正予算 ものづくり補助金の概要
12月17日に令和6年度の補正予算が国会で可決成立し、中小企業庁のホームページの中小企業対策関連予算のページが更新されています。
それぞれの補助金の概要については多くのホームページで紹介されていますが、私自身の整理の目的もあり、このブログに随時掲載しています。
今回はものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)の概要についてまとめてみました。
※小規模事業者持続化補助金の概要はこちらから
【ものづくり補助金とは】
ものづくり補助金総合サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)によれば、ものづくり補助金は、「中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもの」と定義されています。
簡単に言うと、新たなサービスや製品・商品の開発や生産性向上に必要な設備投資に対する補助金です。
【令和6年度補正予算での変更点】
現時点で公開されている「ものづくり補助金の概要」によれば、令和5年度補正予算のものづくり補助金からの変更点は、下記の5点です。

出典:令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金概要
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_mono_summary.pdf
<変更点>
- 支援枠・類型の簡素化
- 給与要件の変更
- 一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上の場合のみ)の要件化
- 従業員規模区分の見直し
- 最低賃金引上げ特例の創設
- 収益納付を求めない
それではそれぞれの変更点に関して見ていきましょう。
【支援枠・類型の簡素化】
令和5年度補正予算のものづくり補助金では、「省力化(オーダーメイド)枠」、「製品・サービス高付加価値強化枠」、「グローバル枠」の3つの枠がありましたが、今回開示された情報によれば、「省力化枠」が廃止されたようです。
また「製品・サービス高付加価値強化枠」の中にあった「成長分野進出類型(DX・GX)」という類型もが無くなっています。
令和5年度補正予算 ものづく補助金 支援枠

出典:令和5年度補正予算ものづくり・商品・サービス生産性向上補助金
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono.pdf
令和6年度補正予算 ものづく補助金 支援枠

出典:令和6年度補正予算ものづくり・商品・サービス生産性向上補助金
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_mono.pdf
「製品・サービス高付加価値強化枠」の補助上限は750万円~2,500万円で、以前の「通常類型」(750万円~1,250万円)と「成長分野進出類型」(1,000万円~2,500万円)の類型枠を取っ払った形になるようです。
他の補助金でもこの傾向はみられますが、枠や類型を整理して、わかりやすい補助金にする意図があるようです。
これはあくまで推測ですが、「省力化(オーダーメイド)枠」は、現在募集されている「中小企業省力化投資補助金」として実施されている「中小企業省力化投資補助事業」に「一般型」として組み込まれるような形になるのではないかと思います。
※中小企業省力化投資補助事業
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/shoryokuka.pdf
【給与支給総額の要件変更】
以前は、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させることが基本要件の一つとされてきましたが、今回公表された概要では、「1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加」となっています。
足下の賃上げの状況等を踏まえ、基本要件を見直したとのことです。
【一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上の場合のみ)の要件化】
今回新たな要件として、従業員21名以上の場合には、一般事業主行動計画の公表が追加されています。
一般事業主行動計画とは、「次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間、(2)目標、(3)目標達成のための対策及びその実施時期を定めるもの」だそうです。
厚生労働省のホームページに、策定・届出に関しての記載があります。詳しくは、下記ホームページを確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/index.html
掲載されているモデル行動計画のサンプルは、それほど複雑なものではないようですが、従業員が21名以上で、ものづくり補助金を検討している方は、早めに上記ホームページを確認いただくことをお勧めします。
【従業員規模区分の見直し】
従来の「製品・サービス高付加価値強化枠」は、従業員規模を①5人以下、②6~20人、③21人以上の3つに分けていました。
通常類型の補助上限は、①750万円、②1,000万円、③1,250万円(いずれも賃上げ特例を含まず)でした。

成長分野寝室類型の補助上限は、①1,000万円、②1,250万円、③1,500万円(いずれも賃上げ特例を含まず)となっていました。

今回は従業員数区分が4つになり、5人以下は750万円、6~20人は1,000万円、21~50人は1,500万円、51人以上は2,500万円(いずれも賃上げ特例含まず)となっています。

【最低賃金引上げ特例の創設】
今回公表された概要では、「力強い賃上げの実現に向けて対応する中小企業等の取り組みを支援し、賃上げ環境を整備するため、最低賃金引上げ特例を創設」するとして、指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いる中小企業に対して、補助率を1/2から2/3に上げる特例を設けています。
概要によれば、「製品・サービス付加価値強化枠」も「グローバル枠」も、中小企業の補助率(事業にかかる費用のうち補助金の上限割合)は1/2となっています。(事業自体が1,000万円かかる場合には、補助金の上限は500万円となります)
この補助率が当該の特例条件をクリアすれば、2/3に上げることが可能となります。
ちなみに小規模事業者や再生事業者は、元々の補助率が2/3のため、最低賃金引上げ特例の対象外となります。
※中小企業・小規模企業の定義:
https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
※ものづくり補助金における再生事業者の定義:
中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受け(注1)、応募申請時において以下のいずれかに該当していること。
(1) 再生計画等を「策定中」の者(注2)
(2) 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年11月8日以降)に再生計画等が成立等した者
【収益納付を求めない】
収益納付とは、補助金の交付を受けた事業(補助事業)の結果により、収入から経費を引いた額である収益が生じた場合に、交付された補助金の全部又は一部に相当する金額を国に返納する制度です。収益納付は、すべての補助金で求められるわけではありませんが、従来、ものづくり補助金では求められていました。
これまでのものづくり補助金では、補助事業終了後の5年間が収益納付期間となっており、この期間に自己負担を上回る収益が出た場合には、その分を国庫に返納しなければなりませんでした。例えば、600万円の設備を補助率2/3で導入した場合、1/3に当たる200万円は自己資金で賄ったことになります。補助事業終了後の収益の合計が200万円を上回ると、上回った分の補助金相当分(この場合は2/3)を国庫に返納することが求められていました。
今回公表された概要では、この「収益納付は求めない」とされています。この点は、資金繰り的にも、手続き的にも従来と大きく異なり、事業者にとってはメリットが大きいと思われます。
【補助事業の開始時期について】
中小機構のホームページには、ものづくり補助金の事務局の募集に関する公募要領が掲載されています。そこでは、「本事業は経済対策に基づく補正予算により措置されるため、令和6年度中に事業を開始することが必要不可欠であり、」との記載もありますので、本年度(令和6年度)中の比較的早い時期に募集が開始されることも予想されます。
【まとめ】
いかがだったでしょうか。
現状は概要が提示されているだけですが、本年度中には募集が開始され、公募要領が公開される可能性が高いと思われます。この補助金のご利用を検討されている方は、中小企業庁やものづくり補助金総合サイトをこまめにチェックすることをお勧めします。
また、従業員21名以上の事業者の場合には、新たな要件となった「一般事業主行動計画」を事前にご準備することが必要となります。
しっかりとした準備を行って、チャンスを逃さないようにしましょう。
それでは、また次回もよろしくお願いいたします。