企業の健康診断ツール「ローカルベンチマーク」 2024/11/02
今回は「企業の健康診断」ツールとして広く利用されている、ローカルベンチマークについてご説明します。
【ローカルベンチマークとは】
ローカルベンチマーク(以下、ロカベン)は、企業の経営者と金融機関、商工会・商工会議所、中小企業診断士等の支援機関がコミュニケーション(対話)を行いながら、経営の現状や課題について分析する際に活用できるツールで、経済産業省が提供しています。
ロカベンは、認定を受けると税制や金融支援などの優遇措置が受けられる経営力向上計画の申請の際に添付が求められたり、事業計画を策定する際の元資料として利用したりします。また金融機関が事業性評価(事業の内容や成長可能性等を評価すること)にも活用され、一部の補助金の申請に添付を求められることもありました。さらに事業承継における経営者と後継者間の現状認識、自社の強みや事業環境の確認、今後の方向性のすり合わせ(対話と理解)のツールとして活用されます。
※事業承継ガイドラインでもロカベンの利用に触れています。
ロカベンについては、経済産業省のホームぺージに特設ページが設けられており、各種の説明や、実際に記入する「ロカベンシート」のダウンロード等が可能です。
ロカベン特設サイト:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
ロカベンシートダウンロードサイト:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/sheet.html
【ロカベンシートの構成】
ロカベンシートはExcelのワークシートで、主に4つのシートに分かれています。
入力するのは「【入力】財務分析」「【入力】商流・業務フロー」「【入力】4つの視点」の3つのシートです。
※「財務分析シート Ver.3」シートは、「【入力】財務分析」を入力すると自動で入力されます。
「財務分析」シートは、企業の基本情報と売上高や営業利益等の財務指標を入力します。「商流・業務フロー」シートは、その企業の業務の流れや、どこから仕入れて、誰に販売するか等の商流を、その企業の差別化ポイントや仕入れ先の選定理由なども含めて記入します。
「4つの視点」シートは、その企業の現状を分析し、将来の目標とのギャップを見つけて、現状の課題とそれに対する対応策を見つけるシートです。
財務面の定量的な分析、商流や業務フローの確認に加え、「4つの視点」シートで定性的な分析を行うことで、その企業の総合的な現状を把握し、今後の方向性について検討する材料となります。
【財務分析シート】
財務分析シートは下記のようなものです。
黄色く表示されている部分を入力します。
左上の黄色の部分(①)は、企業の基本情報を入力する部分です。
「商号」「所在地」「代表社名」「業種」「従業員数」「資本金」等を入力します。
左下の黄色い部分(②)は、企業の財務指標を入力する部分です。
決算で作成する損益計算書と貸借対照表から「決算年月」「売上高」「営業利益」「減価償却費」「現金・預金」「受取手形」「売掛金」「棚卸資産」「ス西郷敬」「支払手形」「買掛金」「借入金」「純資産合計」を入力します。
黄色の部分を入力すると、右側の③の部分にその企業の財務指標が表示されます。表示されるのは、「売上増加率」「営業利益率」「労働生産性」「EBITDA有利子負債倍率」「営業運転資本回転期間」「自己資本比率」です。
※「EBITDA有利子負債倍率」と「営業運転資金回転期間」については、別のコラムで解説します。
④には入力した「業種」「従業員数」「資本金」を基にした基準の数値が表示され、それと比較した結果が、「財務分析シート Ver3」にレーダーチャートや総合評価として表示されます。
※レーダーチャートとは、<図1>の右上の六角形のグラフです。複数のデータを表示します。
【商流・業務フロー】
商流・業務フローは上段に「業務フロー」、下段に「商流」を記載します。
上段の業務フロー(⑤)には、例えば「商品企画」「材料調達」「製造」「販売」「アフターフォロー」のように業務を工程ごとに分解して、具体的に何を行っているか記載します。またそれぞれの工程で、他社よりも優れている点を差別化ポイントとして記載します。
上段の右の部分(⑥)には、その企業が最終的に提供している製品やサービスの内容と、それを通してお客様に提供している「価値」について記載します。これを記載することで、自社でどのような業務を行っているかを再認識するとともに、それぞれの工程における強みと顧客に提供している価値を確認することができます
下段(⑦)には、「仕入先」「協力先」「得意先」「(得意先の先にいる)エンドユーザー」について具体的な企業名と取引金額、取引内容を記載します。またその企業と取引を行っている理由も記載します。これを記入することで、仕入先や得意先との関係性における強みや弱みが明確になるとともに、協力先やエンドユーザーも意識することで、事業全体における関係者の位置づけを改めて見直すきっかけになることもあります。
【4つの視点】
最後に「4つの視点」です。
「4つの視点」はその企業の定性的(数値化しにくい)な情報を整理して、企業の現状を明らかにし、今後の方針を策定するツールです。
企業の定性的な情報として、「経営者」「事業」「企業を取り巻く環境・関係者」「内部管理体制」について分析を行います。(⑧)
⑧を総合的に「現状認識」(⑨)としてまとめます。また企業として目指すところを「将来目標」(⑩)にまとめ、⑨と⑩のギャップから、財務分析や業務フロー・商流分析を考慮して、「課題」と「対応策」(⑪)を検討して記載します。
【まとめ】
いかがでしょうか?
事業計画を立てようとすると、どこから手をつけたらいいかわからないいうことがあるかもしれません。そんな時、ロカベンを使えば、比較的簡単に企業の現状や今後の方針を考えることができます。事業計画を立てる一つのツールとして、一度使ってみることをお勧めします。
今回はここまで。それでは次回もよろしくお願いします。